みどり
ダイエットを本格的に初めて約一週間。
早速飽きてきたので、周りの人にやっていることを話す。
それでも吹っ切れないもやもやで、自分を甘やかす。
編集長も最近お腹周りを気にして、たまに小声で漏らす。
ベルトの上当たりをぽんぽこ叩いていることもあって、
見られたいのか突っ込んで欲しいのかわからないので盗み見る。
好きだし、良からぬ妄想の登場人物にもするけれど、したい訳じゃない。
裸は見たくないし見られたくもないが、縛られたいし殴られたい。
今使っている背もたれが黄緑の椅子に私を括り付けて、蹴り倒してくれないだろうか。
大学時代同じサークルに入っていたNのことを思い出す。
自覚があるのかないのかわからないけれど、ふと残酷なことばかりする人で
とても好かれていながら、ひどく嫌われていて、よく傷ついていた。
見た目も良かったが、優しさが仇になる、漫画みたいな人だった。
泣かせるつもりも無く女を泣かせる、小説のサブキャラクターみたいな。
「お前が一番信頼できる」と言われ、返せず黒板の緑色を見ながら感じた。
出社する運転中、何となく刺激が欲しくて流している映画に出ている俳優。
ある雑誌の「大人の男」特集で表紙になっていたが、まだそんな風になる前。
原作の漫画より、ルックスこそ見劣りするし、体も美しくはないけれど、
してほしいことを、有無を云わせてなお強行させる目の力やものいいに、
うらやましさやあこがれやら、欲をつっつかれて、仕事をする気も起きてくる。
主人公にもみどりちゃんにもなれないから、遠慮なく気分の餌にする。
『さよならみどりちゃん』南Q太(フィールコミックスGOLD)
ある女が、嫌な男に横恋慕しながら、男をとりまく女に勝手にイライラする話。
女も男も漫画版の方が綺麗だが。話としての生々しさは映画版の方がある。
脱いだ姿なんて結果だから興味なくて
着たままよれた服とか、口をついて出ちゃった言葉とかが
春先の浅い緑の色の蔦のように、浸食してゆるゆると人を縛る。